失敗の本質 ~日本軍の組織論的研究~

「情報を軽視し物事を客観的に分析できず、空気に支配されて忖度し合い、自由な議論がなく失敗から学べない組織」

本書から浮かび上がる、第二次大戦で米軍と戦った日本軍の姿です。

今まで何度も読み返し、最近また読み直しました。ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦など日本軍が大敗した6事例を分析し、そこから導かれる失敗の本質と教訓について論じられています。

初版は35年以上前に出版されましたが時代遅れではなく、しかも組織論を超えて日本人の特性までも学ぶ機会を提供してくれています。

特に共感したのは「学習を軽視した組織」という節です。

「事実を冷静に直視し、情報と戦略を重視した米軍」に対して、「対人関係・人的ネットワークへの配慮が優先し、失敗から積極的に学びとろうとする姿勢の欠如」していた日本軍の問題点を指摘し、さらに日本軍教育機関の学生にとって、「問題はたえず、教科書や教官から与えられるもので、目的や目標自体を創造したり、変革することはほとんど求められなかったし、また許容もされなかった」という教育論まで展開し、当時の日本軍の問題が、実は現代の日本人が抱えたままの問題であることを分からせてくれます。

最近、米国企業に比べると投資魅力が少ない日本企業が目につくようになり、(例 提携先外国企業の日本支社のような扱いを甘受しいる。米国企業より利益率が低く、しかも自己資本比率まで低い。マイクロソフト、アップル、フェイスブックのように、提供する製品・サービス自体が私達の生活スタイルを変えてしまう企業が殆ど無い。)本書を読み直してみて、日本人の作る組織である限り仕方が無いことなのか・・・、と思うようになりました。

日本の組織について、日本人について、考える機会を提供してくれる名著です。