実務家のためのオプション取引入門  基本理論と戦略

 米系ヘッジファンドでオプショントレーダーを務める著者が、オプション取引の基本を、どちらかというと投資経験者向けに丁寧に解説してくれたのが本書です。

 「オプション」=「ボラティリティの取引」であり、損益はガンマとセータの「綱引き」で決まるという説明は、短期取引の本質を突いていて感心しました。

 ですから多分、私のような長期分散投資派より短期売買を楽しみたい人に、より役立つはずです。熟読すれば新たなアイデアやヒントが得られるかもしれません。

 特に、14章の「バリアンスストリップ」の説明が良かったです。読めば「こういうデリバティブがあるのか。」と感心するはずです。もしレビューをご覧の方で「VIX指数」関連商品を取引している、という人がいるなら、この章は是非読んでみてください。取引対象の理解がグッと深まります。

 勿論、長期分散投資派の方にとっても本書は役立ちます。例えば確定拠出年金を利用している、数学や統計は大丈夫・自信がある、という人なら、投資のハウツー本より本書の1章~6章を読む方が、基本的な投資理論を身に付けやすいかもしれません。

 なお、途中「ブラックショールズモデル」など、数式が出てきますが、著者は数学に捕らわれることなく感覚的な理解を築き上げるように勧めており、100%理解出来なくても問題ないです。しがしながら、微積分や統計の基本的な知識がないと読むのが段々と辛くなりますので、ご注意ください。

 章末に問題が掲載されていますが、本書の内容なら不要かもしれません。その分☆を一つ減らしましたが、投資の幅を拡げてくれる良い本です。