経済・ファイナンスデータの計量時系列分析

体を解剖して仕組みや特徴を理解するように、株価やGDPなども解剖して、特徴や傾向を、完全とはいかなくてもある程度理解出来れば、投資をする時に、今何が起こっているのか・これから何が起ころうとしているのかを把握し易くなります。またいわゆる投資の常識が本当かどうかを検証することが出来ます。

この本は、様々な解剖道具(数式モデル)の特徴や長所・短所を解説した本です。

また実際のデータに当てはめた分析例も載せており、例えば、「昨晩のニューヨーク市場を受けて今日の日本株がどうなるか」が解説される理由が、92頁~94頁を読むと判ります。

加えて解剖したいデータが持つ性質(定常過程・単位根過程)や、それらを関連付ける共和分についても、要点を簡潔に説明してくれています。

よく確定拠出年金の投資教育で、長期投資で収益率(利回り)のブレが収まっていく様子を示して「長期投資でリスク減少」と説明しますが、殆どの人に大切なのは、何パーセントの利回り(定常過程)であったか以上に、いくら増えたかという金額(単位根過程)であり、最適ポートフォリオが各アセットクラスの共和分ベクトルにより構成されているとは言い難いので、この本を読んで、「長期投資でリスク減少」を鵜呑みにせず、詳細に分析・検討が必要なことが判りました。

Rなどを利用した具体的な分析方法は解説していませんし、要点を説明しているだけですので、もっと知りたい場合は参考文献や関連書籍を理解する必要がありますが、通称「沖本本」と呼ばれ、関係者に愛読されているだけの価値は十分にある本です。