グローバル経済の誕生 貿易が作り変えたこの世界

15世紀頃から20世紀までの世界経済史上の出来事を描いた本です。とは言っても堅苦しい本ではありません。緻密で深い研究に裏付けられているからこそ、まるで目の前で起こったことを見てきたかのように、「運を味方にしたコロンブス」のことや、「ゴールド・ラッシュに巻き込まれたジョン・サッターの生涯」や、「秩序だった海賊 バッカニア」のことなど7章にわたって全部で85のエピソード(少しですけど日本を舞台にしたエピソードも出てきます。)を語り尽くしてくれています。

読んでいると、正義と公正を好みながら、欲望に従って行動してしまう人間の業の深さが分かります。「奴隷貿易に魅了されたカルバン教徒の国オランダ」然り、「中国に対する貿易赤字解消のためにアヘン貿易を開始したイギリス」然りです。それ以外にも様々な国や人々の同様のエピソードが満載で、結局、私達が現在謳歌している豊かさが、何かを犠牲にしながら獲得してきたものであり、これからも何かの犠牲の上に成り立っていくものなのかもしれません。

また、最近デジタル化によって加速していますが、経済のグローバル化も今に始まったことではなく、昔から成立していて、人々が豊かさを求めて帆船で、あるいは隊列を組んで、未知の国や地域にまでも出かけて行ったことが分かりました。

最近の米中摩擦により、政治体制や国の統治方法の違いが原因で世界が分断に向かうかもしれない、との見解が米ソ冷戦当時のように復活してきたようですが、この本に描かれているように、昔から人間はそういうものを乗り越えて、あるいはものともせず、豊かさを求めてお互いに交流することが出来る生き物なのかもしれません。

エピローグに至るまで名著です。ご興味のある方は是非お読みください。