中国減速の深層~「共同富裕」時代のリスクとチャンス

中国減速の深層

福本 智之
2022年06月21日頃
日経BP 日本経済新聞出版


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この書籍の評価
5.0 rating

最近、中国不動産バブル崩壊を懸念する声が高まっています。しかし残念なことに感情論や日本のバブル崩壊と単純に結びつけた議論が多く、本当のところどうなんだろう?と疑問でした。

そこで手に取ったのが本書です。筆者は日銀国際局長を歴任され、中国大使館での勤務経験もあり、中国の良い面と悪い面をバランスよく解説しています。また共同富裕政策や、中国の人口動態、金融と不動産のリスクなど、そこが知りたいという内容を説明していて、大変参考になりました。

3つのシナリオ別の中国経済の成長率予測もありますので、この本が書かれた約1年前からこれまでに、予測のうち何が実現したのかを考えながら読むと、先々の成長率を想定する際の手がかりとして使えます。また本書で紹介されている日本銀行ワーキングペーパー「中国の中長期的な成長力」も併せて読むと、もっと理解が深まります。

この本を読んでみて、今までの自分がいかに先入観や感情論で中国を眺めていたかを知りました。米国に次ぐ経済規模があり、減速しても3~4%の経済成長率が見込めることや、米国と中国という異質な国家同士が経済的にグローバルに結びついてしまっていることを考慮すると、中国を投資対象から除外することが妥当だとは私には思えません。だからこそ等身大の中国経済を理解する必要があり、そのための入門書として最適な本です。