企業のアーキテクチャー

企業と投資家の関係について、これからの企業の在りようについて、広範な知見と深い洞察により、落ち着いて議論をしている本です。

「投資家 対 経営者」とか、「投資家 対 従業員やその他のステークホルダー」という対立で捉えるのではなく、現実の法制度や企業の在りようは、様々な利害関係者の力のバランスの上に成り立っている、という視点を著者が持っていることと、企業の価値は、金額や数値で測れるものだけではないと指摘していることに、とても共感しました。また、企業は人の集まりであり、買収やM&A、分社化などは、その集まりを必要に応じて変化させて、社会や世の中を良くしていくための方策であることも理解できました。資本コストについても、私の読んだ本の中で、最も本質を突いた解説をしています。

「ハゲタカファンド」に代表されるように、「投資家」とか「買収」という言葉からは、企業をバラバラにして売って楽に儲ける、というイメージが、特にリーマンショック直後には強かったようですが、「本当はそんなことではないのに。」と私は思っていました。

そのようなイメージに惑わされずに、企業と投資家の関係について冷静な視点を持つために、この本はお勧めです。