暴落 金融危機は世界をどう変えたのか

本書はリーマンショックとそれに続く欧州債務危機を軸に、トランプ大統領出現までを描いた、グローバル経済史であり政治史です。

世界がいかに米ドルに依存しているか、その米ドルの短期資金繰りが行き詰りそうになったとき何が起こったのか、またFRBは世界的な金融危機に対処するためにどのように振舞ったのか、欧州債務危機の解決のためにECBが何をしなければならなかったのか等々、大変興味深い内容が丹念に描かれており、読みごたえがあります。

また、最近インフレ鎮静化のために利上げが相次ぎ、リーマンショック並みに株価が急落していますので、金融危機の再来を疑ってしまいがちですが、当時と比べて今は何が違うのかを理解するためにも、とても役立つ本です。

7~8年前に、リーマンショック後に顕著となった中央銀行の国債買入れが本当に必要なのか、という議論がされたことがあって、当時の私には必要性を断言できる根拠を持ち合わせていませんでした。しかし本書を読み、特に欧州債務危機の顛末を知ると、金融危機が生じた場合には必要であることを確信しました。また、米ドルを軸として世界の金融がいかに一体化しているかを理解しきれていなかった私には大変有益でした。

上・下2巻で日本語訳で735頁にわたりますが、内容が面白いので苦にならずに読めました。ご一読をおすすめします。