根拠なき熱狂

「歴史は繰り返す。」 この本を読んで最初に浮かんだ言葉です。

約25年前のITバブルの真っ最中に書かれた本ですが、今読んでみると、まるで現在の株式市場のことを書いているかのようです。著者のロバート・シラー イェール大学教授は、2013年にノーベル経済学賞を受賞し、米国の住宅価格動向を示す「S&Pケース・シラー住宅価格指数」を開発したことでも有名です。投資家心理が引き起こす株式バブルについてこの本で論じています。また、その後に起こったリーマンショックのような株式市場崩壊の可能性にも言及しています。それに巻末で紹介している参考文献も多彩です。例えば1980年代の日本のバブルを正当化するために使われた定率成長配当割引モデルには無理がある思っている私にとって”Do Stock Prices move too much to be justified by subsquent movements in Dividends ? “のように今すぐにでも読んでみたいものがいくつかありました。しかしこのように幅広く深く研究している著者でも、インターネットの将来については悲観的で25年後の現在を予測出来ておらず、どんなに優れた人にも限界があることを改めて認識しました。だからこそ予想や株価を基準に投資価値を判断してしまう危うさを著者は研究してきたのかもしれません。現在の株式市場を「リーマンショック後の、コロナショックを挟みながら10年以上続く上昇相場が作り出したバブル」とは見なしたくありませんが、「株にさえ長期投資しておけば資産形成は大丈夫。」という雰囲気が蔓延している今だからこそ、お勧めする本です。