世界中を巻き込んで発展してきた綿業界の、現在に至るまでの5000年の歩みを描いた大作です。著者のハーバード大学教授のスヴェン・ベッカート氏は、毎年コロンビア大学が外交、南北アメリカ史をテーマとした優れた書籍の著者2名に授与するバンクロフト賞を、この本で受賞しました。
これを読めば、イギリス産業革命や米国南北戦争が世界経済に果たした役割や与えた影響、資本主義の発展の経路や産業のグローバル化の進展経路、産業界と政治や産業と金融のつながりまで、つぶさに分かります。また、現在進行している産業の変化を理解し、その行く末を予想する時の参考として、私は所々、電気自動車とそのバッテリーの原料であるリチウム業界にあてはめながら読みました。
それぞれの場面や時代を生きた人々のエピソードがいくつもちりばめられており、世界経済という、理解し難く感じるものの正体が、人間の業の深さが紡ぎ出す、日々の営みであることが理解出来ました。
経済について予備知識のない人にも、もしかしたらそういう人こそ、読んでみることをお勧めします。