線形代数学 新装版

 計量経済学・数理ファイナンスの基礎を勉強していて、線形代数というのが解っていないとまずい、と気付いて手に取ったのが、この本です。読み進めていくと、取引など経済活動によって生じる価値自体が「実ベクトル空間」であることや、様々な概念が計量経済学や数理ファイナンス、統計学などで活用されていることが判ります。

 例えば、計量経済学の重回帰モデルに出てくる行列であったり、無裁定機会の説明に出てくる部分空間と直行部分空間・・・「直行補空間」・「直和分解」の概念を利用していたり、アロー・ドブリュー証券・・・「標準基底」そのものです。

 また、「1次独立」、「1次従属」は、従属的より独立的な情報を多様に集めることの大切さと共通していますし、「べき零写像のフィルトレーション」は、数理ファイナンスで解説されるフィルトレーションを理解する上で含蓄があります。

 要点を簡潔に説明・証明しており、問題の解答も丁寧とは言えませんので、私は数頁読んだり、1問解くのに数時間かかることがありました。どうしても分らない場合はWeb検索すると、この本の記載や問題を基にしたQ&Aが載っていることがあり助かりました。

 複素ベクトル空間は、実数以外は必要が無い私には余分な感じがしましたが、一般教養と思って読むと得るものが多かったです。読了に半年かかってしまいましたが、線形代数の知識があれば、より本質的なところを理解しやすくなりますので、これからが楽しみです。