計量経済学〔第2版〕

 Y=α+βX+u のモデルに単純にデータをあてはめて、年数経過毎にデータのちらばりが大きくなり増える外れ値を、「アノマリー」と解説した運用業界の某研修を受講したことがあります。とても違和感があり釈然としませんでした。今から思えば不均一分散を疑って、対数変換するだけでも「アノマリー」が減ったかもしれませんし、そもそも共和分検定の必要があったはずです。しかし当時の私も、エクセルの回帰分析ツールを使えば簡単に分析もどきが出来ることに一人悦に入っていましたので、「私はこの講師と五十歩百歩だな。」と思いました。

 そこで読み始めたのが、この本です。とにかく地味な練習(計量経済学の方法の解説)と練習試合(解説した方法による推定例)の繰り返しです。根気と忍耐が必要で、中でも辛いのは、豊富に注釈されている数式の証明を理解していく過程です。お手軽な試合もどきを楽しんでいた私には相当きつかったです。しかし理解・知識不足で安易なデータ解釈により間違ったアドバイスをすることだけは避けたいので、1年以上かけて解らない所を何度も読み返し練習問題を解きました。

 単純回帰・重回帰、自己相関、不均一分散、分布ラグ、同時方程式、共和分などが網羅されている他、数式の詳しい証明付きで、大変勉強になりました。また、定常過程とランダムウォークの説明には、長期投資でリスクが減るのか疑問に思っている私にとって沢山の考えるヒントがありました。

 行列を理解されていない場合は、「線形代数学」(日本評論社)などを予め読んでおくことをお勧めします。教科書として使用することを前提に書かれているようなので、自習書としては星を一つ減らしました。

 読んだからといって全てが解るわけではなく、ほんの入り口に立てるだけですが、計量経済学を一からちゃんと勉強したい人にお勧めです。