実務家なら資産配分を検討する際に疑問に感じることや判断に迷うことが、多々あると思います。そういうことに丁寧に答えてくれているのが本書です。
例えば、「長期投資でリスク低減とよく言われているけど、投資している最中は思いっきりブレるのに、そんなことを断言して良いのだろうか?」とか、「そもそもリバランスは何を根拠に行うものなのか?」とか、「とあるロボアドバイザーで資産配分を決めてみたら、不動産の割合が極端に増えたのはどうして?」とか、「このお客様のリスクの取り方からすると、明らかに他のお客様と効用関数が違うはずなんだが・・・。」とか、「〇資産均等ファンドって効果ある?」とか、「アセットアロケーションで投資結果の大部分が決まるって本当?」等々、どう考えたらよいのだろう、どうしてこんなことが言われるのだろう、ということに対して先行研究を示しながら、理論的な背景と、より適切な理解の仕方・考え方を示した上で、実際にデータを使った検証まで行ってくれています。ですから「平均分散分析」の限界とその代替手法も書いているわけですが、それでも「平均分散分析は、効率的ポートフォリオ群を特定する最適化プロセスであり、驚くほど頑健である。」との記述には、私のこれまでの経験からしても、大きく頷けました。
ただ残念ですが、本書の内容を予備知識0で理解することは出来ません。また実装方法までは書かれていません。ですから、その為にまず、各章末の参考文献に記載されている先行研究の論文を読まなければならないでしょうし、ブートストラップやモンテカルロシミュレーションの具体的な方法は、このサイトのブックレビューでも紹介した「モンテカルロ法によるリアルオプション分析」などで学ばないといけません。しかしそれらを差し引いても、この本から得られるものは大きく、手もとに置いて読み返す価値が十分にあります。お勧めです。