資産運用の常識・非常識

 投資教育セミナーの講師をしていて説明している身でありながら、こんな疑問を持ったことがあります。

 「長期投資でブレが抑えられるって、本当?」
 「期待リターンって、実現する?」

 この本に、これらの疑問を解消するための詳しい説明が書いてあります。特に、最近関心が高まっている確定拠出年金の投資教育に携わっている方や、その受講者・利用者にお勧めです。

 この本で取り上げている内容は、日本で出版以来約15年が経過した2017/2月現在でも、未だ広く行き渡ってはいません。ですから、投資セミナーをなんとなく受講したままで、第3章「時間分散でリスクは回避できるか」・第4章「期待リターンは期待通りにならない」などが理解できていないと、投資について誤ったイメージを持ってしまい、思いがけない失敗につながる可能性があります。

 それだけ大切な内容を、可能な限り平易に著した本です。

 また、投資助言の際に「分散投資より、どれか一つをタイミングを見計らって売買する方が良いのでは?」と、お考えの方々を目の当たりにしますが、第5章「なぜバランス戦略が好まれるのか」に分散投資の利点を考えるヒントが書いてあり、とても参考になりました。

 随分前に「日本の常識は世界の非常識。」とおっしゃった評論家がいましたが、当たり前と思っている投資の常識が、実は資産運用の非常識ということがありますので、貯蓄から投資・資産形成に舵を切った日本で、この本の内容が、投資教育や投資助言等の現場を通じて普及されていくことを願っています。

 一読してみて、さっぱり分からないと思ってしまった方は、より理解や知識を深めて読み返されると、本当に良い本だと気が付かれるはずです。