バーナンキ前FRB議長が議長在任中の2012年にジョージ・ワシントン大学で行 なった4回の講義録です。
なにやら難しい印象ですが、中央銀行の役割、金融政策とは何か、リーマンショックにより起こった金融危機と 危機克服のための対策が分りやすく解説されており、「今はFRB議長をやっていますが、元々学生に教えるのが本職のバーナンキ教授による出前授業」といった雰囲気になっています。
何よりも印象に残るのは、講義内容からうかがえるバーナンキ前議長の人柄です。
事実をありのままに見つめ、FRBや金融政策の限界を謙虚に認めつつ、日々最善を尽くそうと取組んでいる様子が伝わってきて、 FRB前議長であるなしに関わらず、人として見習いたいと素直に思わせてくれます。
また、難しい理論を振りかざすのではなく、過去のデータを丁寧に解釈し歴史に学ぼうとしている姿勢にも好感が持てました。
リーマンショックという100年に1度クラスの金融危機に際して、このような方が当局の責任者として尽力して下さったことは、日本に住む私たちにとっても幸運なことだったのではないでしょうか。
唯一残念なのは、学生との質疑応答を忠実に訳するあまり、ある程度の知識がないとバーナンキ議長の答えている内容が理解し難い箇所があることです。
この本は基礎的な内容のみですので、より深いバーナンキ前議長の知見に触れてみたい人には、「大恐慌論」 ベン・S・バーナンキ著 日本経済新聞出版社 がお勧めです。
☆5つと言いたいところですが、訳が分かり難い箇所を踏まえて☆4つにしました。