GE帝国盛衰史

GE帝国盛衰史

トーマス・グリタ/テッド マン/御立 英史
2022年07月14日頃
ダイヤモンド社


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この書籍の評価
4.0 rating

この本を読みながら、随分前にこのブックレビューで取り上げた、「良い戦略 悪い戦略」を思い出していました。ジェフ・イメルトの戦略に関しての理解が、その本の『悪い戦略の特徴3 目標を戦略と取りちがえている』に描かれている通りで、結局ジャック・ウェルチとジェフ・イメルトは、目標をなにがなんでも達成しろ、そのためには気合だ、気合。という経営者だったのかもしれません。

しかしそれだと、ハッパをかけられた社員が数字作り・数合わせに奔走して当たり前です。また、そのための道具として使ったGEキャピタルのビジネスモデル自体が、返済期限が短期の資金を借りて、回収に長期を要する投資に回すという、これもまたこのブックレビューで取り上げた「暴落 金融危機は世界をどう変えたのか」に出てくる、リーマンショック・欧州債務危機で損害を被った金融機関そのものですから、GEの経営がガタガタになったのは当然だと思いました。

GEを立て直すには、一点突破・全面展開が図れる具体的な戦略が必要で、現経営者のラリー・カルプがそれを実行し、成功しつつあるようです。先日発表されたGE fourth quarter & full year 2022 performance を読んでみると、医療機器やジェット機エンジンなどGEの強みを発揮するいくつかの分野に絞って事業の柱に据えており、これによりイメルトが切望した1株あたり利益2ドルの達成が、このレビューを書いている段階で射程に入っています。

残念なのは1年足らずで解任されたジョン・フラナリーで、誰も直視したくない現実と向き合い、真正面からその修正を図ったがために、取締役会に解任されてしまったことは、これもまたどの業界・分野でもありがちなことだと思いました。

ジャック・ウェルチ退任前から、ラリー・カルプ就任後まで、ジェフ・イメルトを中心に歴代CEOの足跡を辿り、当時のGEの経営を解き明かした、GE以外の投資先を判断するためにも必要な知見と含意を豊富に含んだ本です。