Longer-Run Economic Consequences of Pandemics

今回は最近(2020年6月)発表された論文の紹介です。

カリフォルニア大学デービス校経済学部  Oscar Jorda教授(サンフランシスコ連銀シニア政策アドバイザー)、 Sanjay R. Singh准教授、 Alan M. Taylor 特別教授 が執筆されました。(※肩書はこのプレビューを掲載した時点)

1300年代から2010年頃までの長期データを基に、ペストやスペイン風邪など、少なくとも10万人以上が死亡したと推計されるパンデミック後40年間の、欧州各国の自然利子率や大英帝国の実質賃金などの変化を回帰分析により推計し論じています。特に参考になったのが、同期間に欧州で2万人超が死亡した戦争後の変化と比較していることです。パンデミックも戦争も同じような影響をもたらすと単純にとらえていた私には、両者の違いを明確にしている点が目からウロコでした。さらにパンデミック後に貯蓄率が増加する理由について、「社会封鎖でお買い物が減ったから」以外を指摘していることが興味深かったです。

しかし、この論文の分析結果がそのまま今の状況に当てはまるかについては注意が必要です。例えば今回のコロナで重症化しやすいのが比較的ご年配の方であり加えて医療が格段に進歩していますので、生産年齢人口が過去のパンデミックほど失われない可能性があります。また過去には全く想像出来なかったデジタル化が進展していますから、これらを踏まえて解釈する必要があると思います。

が、以上を踏まえたとしても、この時期にこれほど長期のデータに基づいた分析結果を論文として発表されたことは、有意義で素晴らしいことです。誰でも気軽に読める内容ではありませんが、ご興味のある方は是非お読みください。